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ここ数週間、SIBOに対する抗生物質投与、小腸培養から得られる細菌とその細菌の性質、臨床上抗生物質が腸内菌叢に与える影響及び耐性菌発現リスク、抗生物質のスペクトラム(抗生物質が抑制できる細菌の種類の幅)等に関する論文・資料を調査し読み続けてきた。
まだ十分なリサーチを終えたとはいえないが、7,8割は終えた感じがある。リサーチを終え、結果をHPで公表するまでにまだ大分時間がかかりそうなので、途中経過的なものをここで公表したい。(リサーチは主にアモキシシリン、ノルフロキサシン、シプロフロキサシン、リファキシミン、メトロニダゾールを中心に行った。)
SIBO治療に求められる抗生物質の要件がどのようなものか考えると次のようなものが挙げられるのではないだろうか。(なおここでいう嫌気性菌とは医学論文の区別に従い少しでも酸素があれば生育できない偏性嫌気生菌を、好気性菌は偏性嫌気生菌以外の菌という意味で用いている。微生物学上の分類とは異なっている。)
1.安全であるもの
(1)副作用の深刻さと発現率が低いもの
この点、リファキシミンは最も安全な抗生物質の一つと思われるが、他の抗生物質について十分な調査が完了していないため、どの抗生物質が副作用の点で優れるかはさらなる調査が必要である。
(2)耐性菌出現リスクが低いもの
耐性菌出現に関する論文が多数発表されているが、同じ抗生物質でも新しい論文になればなるほど、耐性菌は出現しやすい。さらに抗生物質を多用する国(日本は間違いなくこっちに入る)ほど耐性菌は広くいきわたっている。各論文は年代がばらばらであるため、5年前の論文で耐性菌が出現しなかったといわれても、その抗生物質が現在も耐性菌出現リスクが少ないとは言えない。
ただ、いくつかの論文はフルオロキノロン系(ニューキノロン系、ノルフロキサシンやシプロフロキサシンなど)、メトロニダゾールが耐性菌が出現しにくかったことを述べている。とは言え、いずれも耐性菌出現が最近報告されている。これに対し、ペニシリン系(βラクタム系、アモキシシリンなど)の大部分は結構昔から容易に耐性菌が発現することが報告されており、フルオロキノロンやメトロニダゾールよりも耐性菌は出現しやすいと考えられる。
リファキシミンについては比較できるだけの十分なデータがない(添付文書では試験管では耐性大腸菌が出るが臨床上は報告されていないと記載されているが、最近行われた偽膜性大腸炎患者に対する治験では耐性クロストリジウムの出現が報告されている。)
2.治験においてHBT正常化率、症状改善率が優れているもの
これについてはリファキシミンよりもシプロフロキサシンやメトロニダゾールの方が優れているようである。この2つについては治験に参加した人数がやや少ない感じはあるが、クローン患者向け(全員が水素ガスプロデューサーでメタンプロデューサーは不在)の治験ではシプロフロキサシン(500mg1日2回10日)は100%(14人/14人)、メトロニダゾール(250mg1日3回10日)は87%(13/15)のHBT正常化を示している。
3.効果が長く持続するもの
これについては十分なデータが得られていないのが実情で比較するに足るデータが見つかっていない。
持続性については結局は抗生物質の種類よりもSIBOの病因の有無、種類によるのかもしれない。
4.もし狭いスペクトラムの抗生物質(抑制できる細菌の種類の幅が狭い抗生物質)で効果が得られるなら、より狭いスペクトラムの抗生物質の使用が望ましい。
リファキシミンはかなり広いスペクトラムを誇っており、この点で望ましくないように思われる(ただし、嫌気性菌に対しては好気性菌よりもスペクトラムが狭いらしい)。スペクトラムが広いほど、効果がある菌種が増える。その結果、耐性獲得のための変異を要求される細菌の種類も増えることになる。これは耐性出現リスクを高めるのではないかと思われる。
一方、ニューキノロン系は特に好気性菌を抑制し、嫌気性菌に対しては強い効果を持たない。これに対しメトロニダゾールは嫌気性菌に選択的に作用し、好気性菌に対しては??(情報無し)。
腸内細菌は圧倒的に嫌気性菌が多い(*)ため、メトロニダゾールとリファキシミンのスペクトラムがどちらが広いかはよくわからない。しかし腸内細菌の少数派である好気性菌に主に作用するニューキノロン系は腸内菌叢に大きな影響を与えないと思われるのでスペクトラムの点ではニューキノロン系が望ましいかもしれない。
(*好気性菌は主に上部消化管に生息し、大腸など消化管の下流になると圧倒的に嫌気性菌が多くなる。これは食物と一緒に消化管に流れてきた酸素を十二指腸や小腸内の好気性菌が使ってしまうためと思われる。また細菌の数は小腸に比べ大腸内で圧倒的に多い。)
5.もし嫌気性細菌(偏性嫌気性細菌)に影響を与えないで効果が得られるなら、嫌気性細菌を抑制しない抗生物質が望ましい。
ある論文(結構古い論文だが)によると嫌気性菌叢が、新たに出現した菌の繁殖を阻害する機能を果たしているとされる(ラクトバチルスの大部分やビフィズス菌も嫌気性菌である)。さらに嫌気性菌は腸内の圧倒的多数を占めているから好気性菌をやっつけて効果が得られるならそっちの方がよい。
この点でもニューキノロン系をメトロニダゾールよりも優先すべきかもしれない。
*嫌気性菌にメタンガスを産生する菌が含まれるようなのでメタンプロデューサのSIBO患者は嫌気性菌に選択的に作用するメトロニダゾールの方が良いかもしれない。
*上記のクローン病患者を対象にしたメトロニダゾール、シプロフロキサシンを用いた治験は矛盾を内包しているように思われる。メトロニダゾールは嫌気性菌に選択的に作用し、シプロフロキサシンは好気性菌を主に抑制するという、全く異なるスペクトラムを有する2つの抗生物質の両方が、良い結果を残しているからである。この2つの抗生物質のスペクトラムが重なる部分に存在する菌がSIBOの症状を引き起こしている可能性もある。
*嫌気性菌がSIBOの原因菌と考えているように読める論文もあるが、実際SIBO患者から培養された菌は好気性菌のほうが多く、シプロフロキサシンでもHBT正常化が報告されている。そのため必ずしも嫌気性菌が原因とは限らないと思われる。
6.投薬期間が少なくてすむもの
投薬期間が長くなるほど、耐性菌が出現しやすいとの報告があるが、比較できるデータが見当たらない(大体どれを見ても7~10日前後の投薬量が多い。)
7.値段が安いこと
リサーチが完了していないがリファキシミンは他の抗生物質と比べて10倍以上高いとおもわれる。また国内でも承認されている他の抗生物質は上手く内科医に処方してもらえれば保険が効くかもしれない(無理かな・・)。
いずれにせよ値段の点ではリファキシミン以外の抗生物質に圧倒的に分がある。
8.その他
特に耐性菌出現リスクについては厳格に考えなければいけない。
問題となっている細菌が投与された抗生物質に対して耐性を持てば、もはやその抗生物質でSIBOで治療することはできない。のみならず、将来、何らかの要因(例えばウィルス感染や糖尿病、抗がん剤の投与など)で免疫力が低下して、耐性菌が腸管外の組織に感染した場合、その抗生物質と同じ系統の抗生物質では治療できない。仮に耐性菌がたくさんの抗生物質に対する広域の耐性を有していれば、治療する手立てがなくなり、死に至る可能性もある。またSIBO患者は腸管上皮細胞の浸透性が高まっている場合があることが報告されており、そのような場合には腸内細菌が腸間膜に移行して感染症を引き起こす危険性も存在すると思われる。
少なくとも広いスペクトラムを有するバンコマイシンやその他複数の抗生物質を最後の手段として残しておく必要があるように思われる。
結論
まだ副作用などの比較を行っていない現時点では、1(2),2、4、5、7の点ではニューキノロン系がリードしているように感じている。(なお、腸管から吸収されにくいという点でノフルロキサシンのほうがシプロフロキサシンより好ましいという論文があるが、まだ裏は取れていない。)
*特に詳しく知りたい点がある場合、コメント欄で仰っていただければ出来るだけ優先的にお知らせします。
ただ、どうしても体を治さないといけないほど切羽詰ってるもので・・・
おかげで今じゃ、難解な論文も辞書無しで要点をつかめるようになってしまいました(汗)
少しでも似た症状を患っていらっしゃる方のお役に立てばと思っています。
ところで、こんなブログつけた後でなんですが、今日エレメンタルダイエット(多分クローン病の人が使ってる栄養食だったと思います)でSIBOの85%が治るという論文を見つけてしまいました。
これでいけるなら抗生物質なんて飲まない方がいいじゃないかっ!という話です。しかも書いてるのはSalixから資金提供を受けてRifaximinの治験を行っていたPimentelですのでかなり信憑性があると思います。
また早めにアップしますね。
RCIFAXってごぞんじですか?
ググって見たところ rifaximin
のジェネリック(インドの会社)みたいなんですけど、これってここで書かれているのおなじものなのでしょうか?
値段が全然違うのでおかしいなとも思うのですが、
インドの製薬会社はやすいジェネリック薬を作るので
有名ですし、同じものだとすれば、100錠で8564円で個人
輸入出きるみたいです。
SalixのXifaxanは30錠で19000円というサイトを見ましたが
あまりの価格差のため、同じものとは思えないのですが。
また、
http://en.wikipedia.org/wiki/Rifaximin を
見たところ、まだパテントが有効らしく、ジェネリック薬は
発売されていないとされています。「1998年にFDA承認」とある
から、特許期間が20年としてもまだ、だいぶん期間がある
はずですよね。
しかしながら、RCIFAXの製造元はルピンというインド最大手の
特許切れ薬品を作る会社なんですが、こちらのHPには
http://www.lupinworld.com/indiaendeavour.htm
RCIFAX RIFAXIMIN GI Anti-bacterial (RIFAMPICIN DERIVATIVE)
とあるのです。インドは特許条約をアメリカと結んでないのからなのか
何なのかはわかりませんが、カナダの薬局のサイトには
Generic Equivalentとして安価のインドの会社の薬が記載されています。
http://www.canmedglobal.com/details.asp?name=Xifaxan
私自身はRIFAXIMINを試したことはないのですが、不思議に思ったので
調べたことを書いてみました。
興味があれば一度上記のサイト等を見てください。
更に調べたら
http://blog.livedoor.jp/ajf/archives/50134337.html
こんなのが出てきました。
インドは変わった特許法を持った国のようです。